脂部の真髄。[ブカツ1]
新宿・三平ですっかり昭和を満喫した後、終電にもまだ間があったので、つい、友人のやっているバー「映画酒場 ゾートロープ」に。ここは
前にもちらっ、と書いたが、この店のオーナーバーテンダーが高校・大学の後輩なのである。後輩といっても1学年下なので、もはやほとんど友人と言ってもいいだろう。つい昨年まで会社員だった彼は脱サラをしてこの店を始めたのだが、学校を卒業してから、ずっと映像関係の仕事に携わってきており、映画の造詣はとても深い。で、バーのコンセプトを「映画な酒場」としたわけだ。
といっても、店内は非常にオーセンティックな作りである。これがなかなか凝っているわけで、店内のデザインは鈴木清順監督作品などの美術を手がけた木村威夫氏。昭和30~40年代風の日活アクションに出てきそうなバーというコンセプトでデザインされている。映画の中にしかありそうにないバーが現実にある、逆に言えば、この店は映画のバーのセット、という二重構造になっているわけです。店内にかかるBGMは映画音楽のみで、その数は1000曲以上。リストの中から好みの曲のリクエストもできる。
肝心の酒は国産ウイスキーが中心。というと、しょぼい感じがするが、さにあらず。実は多くの国産ウイスキーのメーカーがあるのだ。そんな知られざる国産ウイスキーがずらっ、と並ぶ。
とまぁ、そんなバーなわけですが、あそこにアイツいるかな、なんて考えなくても、マスターが友人だと店が開いていれば必ず彼はいるわけで。もちろん、他のお客の相手もしなければいけないわけなのだが、だいたいの客が帰る午前2時くらいになると本格的にバカ話に花が咲いてしまい、ついつい長居してしまう。この日もそんな感じで、店内の最後の客が帰った後、彼から「あぶらぶ、見ましたよ」と声がかかる。「あれ、教えたっけ?」「いや、店名でサーチかけたら見つかったんで…」「あぁ、そうか。たいしたことは書いてないけど」「いやいや、紹介してくださってありがとうございます」「なんだい、あらたまって。まぁ、あぶらぶ、と言ってもあんまり脂もののこと書いてないんだよね。そういえばさ、イタリアにラルド、っていう豚の脂身のハムがあるんだけどさ、その名の通りまんまラードなんだけど、これが美味くてさ。今度取り寄せようかと…」「そんなに脂身好きでしたっけ。じゃ、これなんかどうです? 食べますか?どうせ捨てるんですけど(笑)」
「何それ?」
「うちの自家製ベーコンの脂」
「ベーコンは焼いてお出ししてるんですけどね。脂が出るじゃないですか。そのまま流しに流すと管が詰まったり、トラブルの元になるでしょう? 冷えてると固まっててお湯使って洗うのも大変だし。だから、最後にこうやってコースターでフライパンからこそいでいるんですけど…。食べます?」「ベーコンの脂? おまえ、それベーコンディップっていって料理に使うとすごく美味い…」「知ってます、それくらい。でも、これだけ取っとくわけにいかないでしょう」「そんなことはない! 今度フタ着きのビン持ってくるから、それに貯めといてくれ。回収にくるから。とりあえず、その脂は今食べるから、くれ!」「え、本当に食べるんですか? 冗談で言ったのになぁ…」「いいから、早くよこせよ」
「……」
「お前ね、パスタ食べ終わった後の皿に残ったオリーブオイル、誰もいなかったら飲むからね。それにくらべてもひけをとらないよ。こんな美味いものを…。あ、これいくら?」「お金なんか取りゃしませんよ、そんなもので」「ほんと? タダでいいの? これメニューにするべきだぜ。スモークチップ何使ってるの?」「今は桜ですね」「うん、仄かにスモークの香りが脂に移って、ほんとに美味しい。いや、美味しい」「…。ほんっとに好きなんですね。つきあい長いけど、こんな人だとは思わなかった……」「美味しいんだって、食ってみ?
あ、もうないや」
映画酒場ゾートロープ
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コメント
ゾートロープ店主です。
お客様の御所望の品がご用意できましたので、お早めにご来店下さい(笑)。
投稿: 雷電 | 2006年7月28日 (金) 14時48分